orthomolecular’s blog

分子栄養学の勉強メモ

自然治癒の健康相談(5)高血圧は治らないものでしょうか

相談者①:本能性高血圧と診断されましたが、どういうことですか。原因は何ですか。治療法を教えてください。日常生活の注意についても。結局は治らない病気ですか。

専門医の診断①:血圧140ー90以上を高血圧としますが(1989年当時)その患者のうち75%は本能性高血圧です。原因のわかったものと不明なものがありますが、このわからないものを本能性高血圧というのです。原因のわかるものといえば、慢性腎盂炎や糸球体腎炎などによる腎性高血圧、大動脈が詰まって細くなったことによる血管性高血圧、副腎の病気によるアルドステロン症、などがあります。原因不明の本能性高血圧人の60%は遺伝的な要因が絡んでいます。本能性高血圧の治療をする場合には、脳、心臓、腎臓の機能を調べます。目眩や頭痛は無いか、脳卒中の経験は無いか、階段を昇る時に息切れはしないか、心電図初見はどうか、不整脈は無いか、尿タンパクはどうか、眼底の動脈に硬化はないか、などを調べて治療の方針を立てることになります。軽症と診断された時は、過労やストレスを避けて安静を守り、食塩を控えるだけで、血圧は下がります。入院してベッドで安静にしているだけで140ー90ぐらいまでは簡単に下がるものです。日常生活の心得としては、カロリーの取りすぎがないよう、太り過ぎの場合は標準体重に戻すよう努力が必要です。高血圧の合併症には、酒、タバコ、脂肪の摂りすぎなどが関係するというデータもありますので、節制が必要です。安静と食事の配慮だけで、60%の人は血圧が下がります。そして頭痛や肩こりも取れてしまいます。それでもなお、治らない時は、利尿降圧剤などを使います。ただしどこかの臓器に異常のある人は、降圧剤の使用について慎重でなければなりません。本能性高血圧は一生治りませんが、降圧剤で管理できますから、決して怖い病気ではありません。

相談者②(54歳主婦):一昨年から右の耳に耳鳴りがあり、血圧を測ってもらったところ、上が145、下が105と言われ心配です。私は編み物や針仕事が好きで熱中する方ですが、日常どんなことに注意したらよいでしょうか。

専門医の診断②:あなたの場合、最大血圧は160以下ですが、最小血圧が95以上ですのでWHO基準では高血圧ということになります。高血圧患者は、病気の進行と合併症を防ぐために日常生活の注意が必要です。その第一は規則正しい生活です。イライラしたり、仕事に追われたり、緊張を持続したりするのは禁物です。編み物や針仕事についても、あまり熱中しすぎてはいけません。適度な気分転換が必要です。仕事の合間に休み時間をとること、過労を避けることなどが大切です。気分転換の方法としては、適度な運動をおすすめしたいと思います。これは、体調を整えるのにも有効です。ただし、脳、心臓、腎臓などに合併症はないか、血圧はいくらか、などを考慮しながら運動の程度を調整をしなければなりません。冬の寒い時には保温が肝心です。夜中の用便では、冷えないように注意しましょう。食事については大食を控え、太らないようにします。太っているなら標準体重に近づける努力が必要です。食塩はふつうの半分ぐらいにすること、動物性脂肪を過食しないことなどが、食事の内容についてのチェックポイントです。

相談者③(50歳男性):頭を下げて仕事をしていて、立ち上がった瞬間に目眩を起こし、その場に倒れました。動悸が激しく、血圧は190ー120です。医師に安静を指示されましたが、その後も動悸が激しくなり、血圧が上がります。こめかみを抑えたり、頭を叩いたりしたくなりますが、元気がなくて風邪ばかりひきます。風邪をひくと咳が苦しく痰が出ます。血は混じっていません。発作以来、酒もタバコもやめました。

専門医の診断③:胸部X線写真、心電図、尿検査、腎機能検査、眼底所見など、高血圧を中心とする診察を受けることが先決条件です。高血圧が続くと、脳、心臓、腎臓などの動脈が硬化し、循環障害が起きてきます。頭痛、耳鳴り、目眩、息切れ、動悸などが起こりがちになります。こうなると、心臓肥大といって、左心室が大きくなり、運動に必要な血液を、手足の末梢血管に供給できなくなったり、腎臓の機能が低下して、尿の出が悪くなったりします。すぐに汗をかいたり、目眩が起きたり、動悸が激しくなったりするのは、動脈硬化による循環障害からきていると思われます。循環障害があると、呼吸器の感染症が起こりやすく、そのために熱が出たり、咳が出たり痰が絡まったりします。慢性気管支炎や、喘息を起こすことも稀ではありません。高血圧は放っておくと、心不全、腎不全になる恐れがあります。心不全になれば安静にしていても心臓が苦しくなります。また、腎不全になれば、尿が出なくなり、尿中に排泄されるはずのものが全身を巡って尿毒症を起こします。

 

三石巌先生のアドバイス

専門医の指示の共通点は、ストレッサーを避けること、食塩を減らすこと、過食しないこと、などです。奥の手として降圧剤のあることは言うまでもありますまい。現実問題として、高血圧と診断された人の大部分は降圧剤を常用しています。そして、それは一生放せない薬だと、観念しているのがふつうです。私は糖尿病患者であるために、そのほうの専門病院に定期的に通った時代があります。最大血圧は210とか190とかだったので、降圧剤をあげる、とよく言われました。しかし私は断り続けました。その病院の待合室で、たいていの人は居眠りをしています。睡眠というものは、覚醒レベルが下がると始まるものですが、この時、血圧も下がります。その病院で一番多く使われる降圧剤は、覚醒レベルを下げる働きのものでした。私は、それだから断ったのではなく、降圧剤そのものを忌避したかったのです。糖尿病になる前、最大血圧が200を超えることもありました。その時も降圧剤を断っていたのです。私はビタミンCを大量に摂っています。それによって、血圧300程度まで、血管は破れないと思っていました。高血圧で心配なのは、脳出血などの動脈破裂です。だから、その心配がなければ、高血圧も致命的ではないと考えていたわけです。その後、私の糖尿病が鉛中毒からきていたことがわかって、そのほうの治療を始めてから、血圧は150ー80とまったく安定しています。WHOの基準からすれば、これは高血圧ではありません(1989年当時)。

高血圧の要因として、血管や腎臓の障害が挙げられていますが、これらが克服できれば、高血圧が治ってよいわけです。そこで私は、栄養条件に着目します。減塩食も、その一環として位置付けられるでしょう。食塩は腎臓に負担をかけるからです。私が高血圧について相談を受けたときには、高タンパク食と、ビタミンCとビタミンEとを指示します。ビタミンCは血管壁の強化を引き受けるでしょう。ビタミンEは、動脈壁に分布する毛細血管内の、そして、腎臓の血行を改善するでしょう。低タンパク食では血管も腎臓も悪条件に置かれますから、どこかに故障が出るのが当たり前です。このような栄養条件の整備で、高血圧が治った例はいくらもあります。私の場合にしても、血圧が正常に戻った原因の中に、これらのものが含まれていないとは限らないと思います。高タンパク食、ビタミンC、ビタミンEの三者によって、栄養状態の改善にふみきった時には、その時点から降圧剤を減らすことが可能になります。血圧を測定しつつ降圧剤を減らし、ついにゼロにもってゆくことを目標としてよいと思います。これは、合併症を防ぐ方法にもなると思います。

勝手な想像を許していただけるなら、質問者の長年の食習慣に問題があったと思います。それは、低タンパク食、低ビタミン食ではなかったか、ということです。これの切り替えを怠って問題の解決を望むのは無理です。高タンパク食のためには、ご飯をなるべく少なくし、卵のような良質タンパク質をたっぷり食べることです。少なくとも毎日1個とるようにしては、と思います。それがいやなら、配合タンパクをとることになります。卵といえばコレステロールコレステロール動脈硬化のもと、という考えが常識化しています。しかし、卵を食べても、特に血中コレステロール値が上がるわけではなく、また、硬化した動脈壁にコレステロールの結晶がみられるのは、かなり進行してからの話です。従って、卵という最高のタンパク源に手を出さないのは損というものです。なお、受精卵と、非受精卵との栄養上の相違を気にする人がいますが、これに理論的根拠はありません。

薬の副作用は、薬物代謝という名の化学的処理力のレベルいかんによって、個人差があるはずです。薬物代謝は主に肝臓で行われますが、そのレベルを決める最大の要因は、タンパク質とビタミンB2、A、E、Cとです。降圧剤の服用を始めるとするなら、それの薬物代謝のために必要な栄養条件を整えたら良いと思います。それでもなお、副作用を覚悟しなければなりません。専門医の診断に見る通り、高血圧には多くのデメリットもありますが、メリットもあります。最高血圧が180くらいあっても、最低血圧が安定しているなら、気力が充実し、ボケにくいと言われます。動物実験によれば、本能性高血圧の原因は幼少期の低タンパク食にあるようです。高タンパク食には、本能性高血圧改善の効果があると私は思っています。