orthomolecular’s blog

分子栄養学の勉強メモ

自然治癒の健康相談(7)手足がけいれんするする原因がわかりません

相談者(21歳女性):6年前から足にけいれんが始まり、方々の大学病院で診察を受けました。結局は、原因も病名もわかりません。現在、K大学病院で薬をもらっていますが、効いているとは思えません。症状は悪化する一方で、30秒おきに発作があり、最近、けいれんが手にも及んできました。

三石巌先生のアドバイス私は、鉛中毒による糖尿病のため、東京・幡ヶ谷の町田治療室に通ってリンパマッサージを受けています。この女性に会ったのは、そこの待合室でのある日のことでした。その場で私は、この病気は筋肉に問題があること、筋肉はタンパク質でできていること、筋肉細胞内部の器官はたえず壊され、作り直されていること、を話しました。したがって、作り直しの材料であるタンパク質の補給を怠っては、筋肉が劣化するのは当たり前であることを話しました。私は町田治療室の一患者でして、べつにそんなお談義をする立場にないのですが、あまり気の毒に感じたので、余計なお節介を試みたわけです。私のお節介はなお続きました。治療室でそのT嬢の電話番号を教えてもらい、帰宅後に母親と話をしてみたのです。その話によって、T嬢は一人娘で、両親が嘆きの極にいることがわかりました。私はまず、食生活を訊ねました。すると、発作がひどいものだから、昼食の時まで起きてこないこと、気力を喪失しているものだから、ろくに食べないことなど、両親にとって悲観材料ばかりなのです。T嬢は一日中ベッドの中にいて、親類にさえ顔を合わせたがらないとのことでした。私がT嬢を見た時、マッサージ治療は2回目だそうで、親類に無理に連れてこられた1回目は何もせずに帰ってしまったとのことでした。治療師の話によると、T嬢の筋肉は異常にかたく、治療のための指が全然めり込みません。結局、T嬢はリンパマッサージを続ける一方、配合タンパクとビタミンEを使うことになりました。

次ページの図のように筋肉というものは筋繊維があり、その中に筋原繊維があって、さらにその中にタンパク質のフィラメントがある、という構造になっています。フィラメントにはアクチンとミオシンとの二種のタンパク質のものがあって、筋肉の伸縮は、この二種のフィラメントの滑り運動にほかならないことになります。

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フィラメントのすべり運動



筋肉がかたいというこうとは、伸縮がスムーズにゆかずフィラメントの滑り運動が上手くゆかないことでしょう。これはフィラメントを包むレシチンなどのリン脂質の酸化により、また、乳酸の蓄積によると考えられます。この乳酸をなくす方法は二つあります。一つは、ビタミンB1によって、これを二酸化炭素と水にまで分解してしまう方法です。もう一つは、細胞膜の透過性をビタミンEによって正常化して、乳酸を筋肉細胞から外に追い出す方法です。ビタミンEには、リン脂質の酸化を防ぐ効果もあります。

T嬢の場合、筋肉は頻繁に収縮を繰り返しますが、ビタミンB1が不足していれば、そのつど乳酸が発生します。だから、筋肉がかたくなるのは当然といえるでしょう。一方、筋肉の収縮にはエネルギーを必要としますが、そのエネルギーは、脂肪酸、グリコーゲン、クレアチンリン酸などから作られます。筋肉がかたくなっているのは、こういうもののストックが底をついている証拠でもあるのです。このうちクレアチンリン酸は、ビタミンEがないと筋肉中に保持されません。このビタミンがなかったら、クレアチンリン酸は、利用されることなしに、尿に出て行ってしまいます。

ビタミンEは、血液の粘度を下げることによって血行を改善します。T嬢の筋肉は血管を圧迫して細くしているでしょうから、このビタミンEの作用に期待する必要があるわけです。血液がよく流れていなかったら、筋肉作り替えの材料の輸送がうまくいかないはずではありませんか。私が配合タンパクとビタミンEを選んだ理由は、けいれんには筋肉に収縮を指令する中枢の異常からくるものがありますが、T嬢の病気の原因は、神経よりも筋肉の異常にあるとの想定にあります。その上、中枢性けいれんにもビタミンEが効くとの情報もありますので、どっちに転んでもビタミンEと思いました。

その後の経過:

T嬢は、高タンパク食と、ビタミンEと、マッサージとを始めて、1週間後にはめっきり元気になって、人に会うようになりました。そして念願の音大受験のため、毎日6時間のピアノの練習を始めました。