orthomolecular’s blog

分子栄養学の勉強メモ

自然治癒の健康相談(11)疲れやすいのは貧血でしょうか

相談者(15歳女子高生):最近、疲れやすく、駅の階段を上がるときなど息切れがします。友人や家族から、顔色が黄ばんでいると言われます。寝起きが悪く、夕方に足が浮腫んでいることもあります。貧血ではないかと思いますが。

専門医の診断:症状を見ると、女性にありがちな、鉄欠乏性貧血が考えられます。人体には4gの鉄がありますが、その70%ほどはヘモグロビン(血色素)として赤血球に入っています。ヘモグロビンの役目は酸素の配給ですが、鉄が不足だとヘモグロビンが十分に作られず、赤血球も小型になります。このため、顔色が優れず、目まいがしたり、疲れやすくなったりします。鉄剤を一日100mgずつ、2〜3ヶ月続ければ治るでしょう。肉類、レバー、ほうれん草など鉄の多い食品を摂ることも大切です。質問者のような女性の場合、鉄の補給が発育に追い付かず、生理的出血も手伝って、鉄の貯蔵が底をつき、鉄欠乏性貧血が起きるのです。

 

三石巌先生のアドバイス

現在、女性の鉄欠乏性貧血は世界中に広まっていますが、この原因は、昔ながらの錆びる包丁やナイフが、ステンレス製にかわったためです。私たちは、調理や食事の際に自動的に鉄さびを口に入れていたのに、それがなくなったのが原因の一つとされています。

そこで、何から鉄をとったら良いかという問題になりますが、肉類やほうれん草は良いとして、レバーはちょっと賛成しかねます。というのはレバー(肝臓)は、解毒器官であるために、解毒に失敗した有機塩素剤や重金属を含む恐れがあるからです。専門医は鉄剤の服用を勧めていますが、それが最も無難かつ確実な方法です。私個人について言えば、毎日鉄剤をちゃんと飲んでいます。

ところで質問者の場合、この全症状を鉄欠乏だけで説明することには疑問があります。基調として、低タンパク食を想定したいのです。低タンパク食が続くと、肝機能の低下や、低タンパク血症が起きます。顔色の黄ばんだ原因を前者に、足のむくみの原因を後者に結びつけたいと思います。疲れやすさは貧血からもきますが、肝機能低下からもきます。低タンパク血症というのは、血中タンパク質濃度が低くなっている状態なので、自然、血液は水っぽくなります。すると、血液は、血中タンパク質濃度を上げようとして、水を血管の外に追い出そうとします。この水を含んだ組織に、むくみが起きるのです。

なお、ヘモグロビンは、鉄をタンパク質が抱え込んだ形の分子であって、いわゆる複合タンパクに属します。ですから、タンパク質が不足でも、ヘモグロビンは十分にできないのです。質問者の場合、低タンパク食を想定した背景には、このようなことも絡んでいるのわけです。

ヘモグロビンをも含めて、血液やその成分を作る機能を造血機能と言いますが、造血機能そのものは「代謝」ですから、酵素を必要とし、さらに助酵素を必要とします。その酵素はタンパク質ですから、タンパク質の補給が十分でなかったら、アウトです。そして、造血に働く助酵素としては、ビタミンB6、B12、C、E、葉酸などが挙げられます。仮に、哲哉タンパク質に不足はなくても、これら造血ビタミンが不足していれば、造血機能がスムーズに行われるはずはないのです。

私としては、質問者の場合のような思春期の特徴として、ビタミンEの血中濃度が低い傾向がある、という事実が気になります。もし質問者に、生理痛があったら、その確率はおそらく90%を越えるでしょう。

専門医の指示された鉄剤の服用は、鉄不足の食生活からきたものです。したがって、食生活の改善がない限り、その服用をやめるわけにはいかない、というのが私の意見です。結局、鉄剤の他に必要なのはビタミンB12のためのチーズ、葉酸のための葉菜類などを食習慣の中に取り込むことと、高タンパク食と、ビタミンE、ビタミンCなどを摂ることです。多分これによって、故障の全てが消えることでしょう。

高タンパク食とは、ほかでもありません、体重50kgの場合、1日に50gのタンパク質をとることです。