orthomolecular’s blog

分子栄養学の勉強メモ

自然治癒の健康相談(9)下腹が出て気になります

相談者(42歳女性):2度目のお産の後からだと思いますが、下腹が出はじめて、それがだんだん酷くなりました。一旦出っぱった下腹はどうにもならないものでしょうか。いつも気になるものですから。

三石巌先生のアドバイス

女性のお腹が張り出す第一のきっかけは産後の不心得です。妊娠で弱ったままの腹筋をそのままにしておくと弱った腹筋をカバーするために皮下脂肪が蓄積して、下腹が締まりがなくなって張り出してきます。産後15日もしたら、腹筋の運動を始めなければなりません。一番簡単なのは、テーブルの前に腰をかけ、両肘をテーブルにつき、全身を肘の力で持ち上げるような気持ちでテーブルを下に押す方法です。この時、全力投球のつもりで、6秒間その力を抜かないことが大切な条件です。これはアイソメトリックという方法です。筋原繊維はフィラメントのすべり運動で、緊張したり弛緩したりしますが、その緊張の力は、それぞれの筋原繊維ごとに一定です。つまり例えば、1キログラムの力を出すか、それともゼロかということです。これを悉無律(しつむりつ)といいます。仮に、最大10キログラムまでの力を出せる筋繊維があったとしましょう。そしてそこに10本の筋原繊維があったとすると、1本の筋原繊維が出す力は1キログラムとなります。この筋繊維に3キログラムの力を出せという指令が中枢からくると、筋原繊維は3本で間に合います。つまり3本が働きあとは休んでいます。そして次の瞬間にはこの3本が休んで、他の3本が働き出します。こうしてたえず交代が行われているので、筋肉はなかなか疲れません。

この場合の相談ですが、ここに例をとった筋繊維が、問題の女性の腹筋を構成するいくつかの筋繊維のうちの1本だとしましょう。この筋繊維はここで全力の30%しか出していない計算になります。私はアイソメトリックス成立の条件として、6秒間の全力投球をあげました。全力の三分の一の力ではだめなのです。全力投球と言っても、100%はなかなか無理です。仮に60%の力を出したとしましょう。すると、6本の筋原繊維が働き、4本が休むことになります。そこでいざ交代というとき、困ったことが起きるでしょう。交代要員が足りないのです。アイソメトリックスの原理は、筋原繊維の交代要員を不足に追い込むことなのです。アイソメトリックスは、筋肉という意識のない組織に対して、教訓を与えます。交代要員の不足は、生体側の一つの失態として認識され、フィラメント数の増加によって、筋原繊維の出せる力を大きくすることになるのです。この方法で腹筋はだんだんと強くなります。そして、腹筋が十分に強ければ、そんなところに皮下脂肪はつかないのです。6秒という時間ですが、これは、クレアチンリン酸を消費し尽くすのに要する時間の標準値です。全力投球の場合、筋肉は血管を圧迫して血行をほとんど止めるので、エネルギーはそこに蓄えられていたクレアチンリン酸によって賄われるのです。この腹筋に対するアイソメトリックスは、一般女性の下腹部の出っぱりに対して有効です。無論、男性もここでのけものになっていません。

腹筋のアイソメトリックスとしてここに紹介したものは、私の創案ですが、どんな方法ででも、腹筋を全力投球の50%以上の力で6秒間緊張させることができれば、それで良いのです。例えば仰向けに寝て状態を起こすような運動でも、そのうちに入ります。しかし、これではたして、いわゆる全力投球になるかどうかはわかりません。なる人もあり、ならない人もあると思います。下腹部の皮下脂肪のついた筋肉は、よくタイヤに例えられますが、タイヤのようにしてつまんだ部分の厚みは、皮下脂肪の厚みの2倍になります。アイソメトリックスにかかる前に、まずご自分の皮下脂肪の厚みを調べておいたらいかがでしょう。なお、アイソメトリックスは筋肉の代謝を促進しますから、タンパク質の補給がないと、消耗を招くことになります。ここでも、高タンパク食が必要になります。これは、スポーツマン一般に対して言えることです。