orthomolecular’s blog

分子栄養学の勉強メモ

自然治癒の健康相談(10)減食しないで痩せたいのですが

相談者(50歳主婦):身長は155㎝しかないのに体重は65㎏もあります。医者から減食を勧められているのですが、三日と続きません。減食しないで痩せる方法があれば、助かります。美容体操はやっています。

三石巌先生のアドバイス

肥満というのは、筋肉が太ったのでもなく、骨が太ったのでもなく、皮下脂肪が厚くなっただけです。だから、皮下脂肪さえ減らすことができれば、あなたの目的は達せられるのです。顔でも足でも、どこを見てもそうですが、皮下脂肪はそこにいすわっている感じです。しかし事実はそうではなく、皮下脂肪もまた、分解し、新しいものがあとがまをうめるのです。この回転はのんびりしたものではなく、ラットの実験では半減期が2〜3日しかありません。2日か3日のうちに、半分が新旧交代を終えるというのですから、かなりのスピードです。脂肪組織の中の脂肪は、いわゆる中性脂肪で、1分子のグリセリンに3分子の脂肪酸が結合した形のものです。脂肪酸にはいろいろありますから、中性脂肪の種類は莫大なものになります。

その脂肪酸のうち、私たちにとって特に重要なものはガンマリノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸の三つで、これを不可欠脂肪酸といいます。このうち最初の二つはリノール酸から体内で作られますが、現実にそれは困難な条件を伴うので、不可能に近いと考えるのが無難です。そういうわけで「リノール酸リノール酸」と騒ぐよりも、ガンマリノレン酸の給源としての牛乳やバターに、アラキドン酸の給源としての卵に、そしてエイコサペンタエン酸の給源としてのサンマ、イワシ、サケなどに着目するのが賢明ということになります。

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脂質 | オーソモレキュラー栄養医学研究所

困難な条件とは、マーガリンもショートニング飽和脂肪酸もあってはならず、亜鉛マグネシウム・ビタミンB6がなければならないということです。からだと同じ物質を作る代謝を同化、からだを作る物質を壊す代謝を異化といいます。脂肪組織で、異化と同化がバランスしていれば、肥満状態が定常化していることになるわけです。ということは痩せたい人は、脂肪組織の異化を同化よりも優勢にすれば良い、ということになります。脂肪組織の異化では、脂肪酸が発生します。そしてこれは人体のエネルギー源として最大のものです。だから、エネルギーを使えば、脂肪組織の異化が高まるわけです。それで、美容体操とかマラソンとか、エネルギー消費の大きい作業が痩せる方法と言われることになるのです。

しかし、脂肪を1キログラム減らすためには、東京から三島市まで歩かなければならないと聞いたらガッカリする人が多いだろうと思います。運動で体重を減らすのは生やさしい企てではないことがお分かりでしょう。

私たちの体のエネルギー消費は、筋肉の運動によってだけ、起こるのではありません。消化液を作るのにも、消化をするのにも、神経が信号を出すのにも、体の中の出来事で、エネルギーを必要としないものは一つもありません。べつにスポーツをやらなくても、脂肪の異化は間違いなしに進行します。だからあなたは、異化のスムーズな進行をはかることと、脂肪の原料を取るのを控えて、同化のレベルを下げることを考えれば良いのです。

脂肪組織の脂肪の原料には、脂肪酸もありますが、主としてブドウ糖が使われます。だから糖質を控えることです。それでは減食ではないか、減食はまっぴらと、あなたはおっしゃいますが、糖質の代わりにタンパク質を摂れば良いのです。

アルコールには、糖をエネルギー化せずに脂肪化する作用があります。したがって、酒を嗜むときには、特に糖質を遠慮することです。

全ての代謝酵素のなかだちによって行われますが、酵素はタンパク質であって、タンパク食品を原料として作られるものです。脂肪の異化という代謝にも、酵素、すなわちタンパク質がなければならないのです。そういうわけで、脂質をタンパク質にかえれば、べつに減食せずに痩せる方向への動きが出てくるはずです。しかし、もしあなたが、何がなんでも痩せたいと思うことがありましたら、次の方法をお試しになるべきです。

タンパク質だけを、1日に体重の1000分の1だけとします。そして、食塩を4グラムほど摂ります。そのほかの口に入るものは水だけとします。これを実行すれば、脂肪は異化専門ですから、体重はどんどん減ります。ただし、脂肪組織の細胞は、脂肪球という名の大きな玉を抱え込んでいて、脂肪が分解してできた水が、替え玉になって球形を保つ傾向があります。その水がうまく排除されるまで、体重は減らないわけです。だから、この「規定食」を始めたらすぐに体重が減ると思っては間違いです。なお、ここで食塩を摂るのは、減食をすると食塩が排出されて、それの欠乏状態に追い込まれるからです。食塩が欠乏すると、まず無気力になり、尿量が減ってきます。それから、タンパク質の必要量をどうやってとるかという問題が残りました。私たちの日常の食事だと、腹一杯食べても、これだけの量のタンパク質が取れない場合が珍しくありません。そこには抱き合わせでかなりの量の糖質や脂質が入ってくることをまぬかれないのです。ここで、例の配合タンパクがものをいう番が来ました。このものは食品から脂質や糖質の大部分を除去してありますから、純粋にタンパク質だけをとる目的にかないます。配合タンパクは、1グラムにつき4キロカロリー前後の熱量しか持っていません。この規定食を考えたのは、世界的な学者チームです。デブをかこつ生理学者や医学者が、自分達を実験台にして、断食に代わる方法を研究し、学問的に全く欠点のない痩せるための食事として、このような考えを探し当てたのです。現在のところ、これより合理的な方法はないと私は思います。詳しいことは『高タンパク健康法』にあります。

タンパク質の給源として彼らの選んだものは、いうまでもなく私のいう配合タンパクです。そこで、配合タンパクの使用法ですが、私のやり方では、牛乳150㎖に配合タンパクを10g、適量のカルピス、ビタミンC数gを加えてシェーカーに入れ、よく振ります。これでタンパク質はいくら摂れるかというと、配合タンパクの質によって大きな開きがありますが、私の使っているものだと、約10g、牛乳から約3gで、合計13gになります。そしてカロリー数は約130程度です。これを「高タンパク単位食」と呼ぶことにします。

高タンパク単位食は味が良いのですが、痩せるための処方ではありません。ですから、あなたの場合には、糖分の量を調味のための最低限にとどめるのが良いと思います。

次はビタミンCの問題ですが、これはあったほうが良いと思います。というのは、この規定食では、ある程度の空腹感が避けられず、それがストレッサーになります。ストレスが起きると、体タンパクの分解が始まって不利な条件を生むからです。そしてビタミンCには、ストレッサーに対抗する働きがあるので、これを添加することには、調味の問題以上の意義があるのです。ここで一番気になるのは、空腹感の問題です。苦しくなった人は、高タンパク単位食に、何かを適当に追加していただきましょう。痩せる法の大原則が、タンパク質と糖質との比の値を大きくすることにあることを忘れないでください。なお、代謝肥満といって、エネルギーを糖に求めず、もっぱら脂肪によるタイプの人が痩せるためには、糖分を完全にカットする必要があるでしょう。