orthomolecular’s blog

分子栄養学の勉強メモ

自然治癒の健康相談(13)流産が怖いのですが

相談者①(32歳主婦):これまで何回か流産を経験しました。私はひどい頭痛持ちで、よく頭痛薬をのみます。それが原因で、流産や奇形児の心配はないものでしょうか?つわりの時は、鎮痛剤をのんできました。

専門医の診断①:ラットなどの動物実験では、鎮痛剤や安定剤を大量に与えてみると、奇形児が生まれるケースがあります。人間についてはそのような報告はありませんが、奇形の発生が絶無であるとは断定しかねます。あなたの場合、いまの薬をつづけると、胎児の発育にわるい影響をあたえるおそれがありますから、薬はやめたほうがよいと思います。頭痛ががまんできないときは、脳神経科の専門医に相談して、適切な治療をうけてください。

相談者②(28歳主婦):一児の母です。これまで三回も流産し、習慣性になっている、と医師にいわれました。最初のお産のあと、一年半して中絶したせいかと後悔しています。ぜひ、もう一人ほしいのですが。

専門医の診断②:習慣性流産の原因はいろいろあって、不明の点が多すぎます。あなたの場合、お産と中絶との経験がありますので、そのときにできた頸管裂傷が考えられます。これと診断がつけば、頸管縫縮手術でなおります。もう一つは、ホルモンの異常です。それも、とくに問題になるのは黄体ホルモンです。これは「妊娠持続ホルモン」とまでいわれるもので、これが不足すると、子宮筋が緊張しすぎて、胎児をおろしてしまいます。これが原因の流産は、妊娠三ヶ月ごろにいちばんおこりやすいものです。さらに、甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンの、不足や過剰でおこる流産もあります。あなたの場合、お子さんを熱望するあまりの心配が、かえって流産の元になっていることも考えられます。

相談者③(25歳主婦):結婚後五年になります。一回流産し、その後、卵巣嚢腫のため左卵巣を摘除されました。手術の後遺症か、足・腰がときどき痛みます。最近、また流産してしまいました。習慣性流産でしょうか。

専門医の診断③:子どもがほしいとか、流産ぐせがついたのではないかとか、日常生活のイライラといった、感情のみだれが腰痛のもとになるケースがあります。肉体的な異常だけではなく、心理的安定度もしらべてもらい、治療をうけることをおすすめします。俗にいう流産ぐせは、ホルモン失調も原因の一つですが、片側だけでも卵巣がのこっていれば、機能上の心配はありません。流産の原因としては、子宮の発育不全や異常位、頸管弛緩症などが考えられます。頸管弛緩症の縫縮手術はかんたんなものです。感染症も問題になりますが、昔からよくいわれている梅毒のほか、最近は、トキソプラズマ症が注目されています。とにかく、あなたとしては、妊娠の初期に労働をひかえ、衣・食・住・性とも安定した毎日を送るように心がけることが、まずたいせつです。

 

三石巌先生のアドバイス

①の場合ですが、習慣性流産と頭痛とのあいだには、共通の原因が考えられます。どちらも、ビタミンEの欠乏でおこるからです。スイスの統計ですが、流産の習慣のある婦人にビタミンEをあたえると、正常な出産に成功する割合は、流産の二回経験者で59%三回経験者で23%、という成績がでています。ビタミンEをのんだら、頭痛薬も安定剤もなしで、頭痛がなおり、正常なお産ができる可能性があると思います。ビタミンEには、天然品と合成品とがあります。天然品は小麦胚芽油からとったものです。抗酸化作用の点では、天然品も合成品もたぶんちがいがありませんが、抗流産作用となると、合成品は劣ると思います。ビタミンEの抗流産作用は、ホルモン分泌の調整、胎児の血行改善、子宮運動の抑制などによる、と考えられています。ビタミンEの一日量は400国際単位でよいと思います。

②の質問者にたいして専門医は、黄体ホルモンについて説明していますが、これはすべての性ホルモンの前駆物質で、いわば、この問題のカギをにぎるホルモンです。そして、これをつくる代謝にビタミンEが関係しているのです。性ホルモンと副腎皮質の関係については、図を参照してください。

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流産の心配をする人が、最初に目をつけなければならないのは、ビタミンEだと思います。専門医もいわれることであり、理論的に考えてもあたりまえのことですが、中絶は、頸管裂傷でもつくらないかぎり、流産の原因にはならないはずではありませんか。

③の場合ですが、専門医はストレスをとりあげています。よく「病いは気から」といいますが、この「気」はストレスの原因ストレッサーをさしています。ストレスに強くなるために、ビタミンC、ビタミンE、タンパク質の三つが重要であることは、再三くり返したところです。気になることがあったら、まずなにをおいても、この三つに手をだすことだ、と私は思います。それから、トキソプラズマ症のことですが、トキソプラズマは単細胞動物の一つです。これは、定温動物に寄生します。牛・豚・鳥などの肉、鶏卵などによくついています。こういうものは、熱をよくとおしてからたべるにかぎります。血のしたたるビフテキも、生卵も、私は敬遠します。犬や猫のふん、吐いた物、などを扱ったとき、手をよく洗うこともだいじです。ただし、いちばん感染率の高いのは豚で、約10%といわれます。豚肉はとくによく火をとおしましょう。トキソプラズマが成人に寄生して害をするケースはごくまれですが、肝臓をやられたり、失明したりする人もないではありません。

妊婦に寄生しているトキソプラズマは、胎盤をとおして胎児にはいり、奇形をおこしたり、流産の原因をつくったりすることがあります。奇形児は、生まれることもありますが、流産や死産の形をとることもあります。ドイツのデータですが、1963年にランゲル博士が、習慣性の流産・死産・早産をする婦人70人について調査したところ、そのうち23人にトキソプラズマが発見された、という報告があります。むろん、これらの異常の原因が、はたしてトキソプラズマであったという断定はできませんが、相関関係のあることは確実とされています。