orthomolecular’s blog

分子栄養学の勉強メモ

自然治癒の健康相談(22)エリテマトーデスについて教えてください

相談者(40歳主婦):二年ほどまえにほっぺたに発疹がでたと思っているうちに、熱がでたり、節ぶしが痛かったりで、診察をうけました。そこで、全身性エリテマトーデスだと診断され、コーチゾンをやりました。そのせいか、顔がお月様のように丸くなり、手足がやせてきました。これから先が心配です。

 

三石巌先生のアドバイス

全身性エリテマトーデスは、自己免疫病または膠原病とよばれる病気で、難病の一つです。膠原はコラーゲンの意味ですから、この病気はコラーゲンの病気であり、血管や結合組織の病気ということになっています。あなたの場合、副腎皮質ホルモンをのんでいるわけですが、このホルモン、すなわちコーチゾンがきくことは、膠原病診断のめやすの一つとされています。だから、あなたの場合にも、これがきいているはずなのです。なにもせずにほうっておけば、関節痛がおきます。胸膜炎や腹膜炎もおきるでしょう。また、腎臓がわるくなったり、肝炎がおきたり、リンパ節がはれたり、脾臓がはれたり、その名のとおり、これはまさに全身病に発展する傾向を持つ病気です。コーチゾンはたしかにすばらしい薬です。全身性エリテマトーデスとあっては、ほかにたよりになる薬がないのです。しかし、コーチゾンの必要がなくなれば、アスピリンに変えます。コーチゾンはステロイドホルモンのなかまの代表的なものなので、よく、ステロイドとよばれます。この副作用は、外見上はムーンフェイス(満月顔)ですが、これは、皮下脂肪が首から上に大量につくためです。手足がやせるのは、その筋肉が分解するためです。ステロイドの副作用は、外からみえるだけのものではありません。神経障害、消化器潰瘍、筋萎縮、抵抗力低下、などいろいろです。副作用があるからやめようとすると、症状が以前よりひどくなったりもします。ステロイドの効果は、その免疫抑制作用にあります。

全身性エリテマトーデスの特徴として、患者の30%に、自然治癒がみられるという事実のあることです。自然治癒といえば、なにもせずに治ることを意味するでしょうが、現実には、そこに重大な転機があったはずです。私の立場からすれば、当然のこととして、そこに焦点をあわさないわけにはいきません。

まず、全身性エリテマトーデス患者の血液をしらべると、そこに、核酸や核タンパクにたいする抗体がみつかります。核酸とは、遺伝子そのものや、遺伝子のコピーの材料ですし、核タンパクとは、遺伝子の核酸をつつむ衣のタンパク質です。そして、抗体とは、相手方の活動をおさえるはたらきをもつ分子で、これはタンパク質です。抗体が取り押さえる相手を抗原といいますが、一般に、抗原になるものは「非自己」、つまり、じぶんではないもののことです。すると、あなたの場合、自己であるべき核酸や核タンパクが、まちがって非自己とされ、抗原になってしまっているわけです。一般に、抗原があると、それにたいして抗体をつくることを免疫応答といいます。この場合には、自己にたいして免疫応答がおきているので、これを自己免疫病というわけです。じつをいうと、自己免疫病という名の難病のからくりは、現在まったく不明ですが、ここに私の仮説を紹介します。詳細は『タンパク質の分子栄養学』に書いてありますが、そのアウトラインはこうです。

ます、自己と非自己とは、どこがちがうかを考えてみなければなりません。核タンパクでもなんでも、タンパク質と名のつくものは、組織ごとに構造がちがいます。その構造の違いから、自己と非自己の区別がつくはずです。もし、なにかの原因で、核タンパクの構造が本来のものとちがったと仮定しましょう。そのときそれは、もう自己ではありません。それは非自己とみとめられ、それをとりおさえる抗原がつくりだされてよいはずです。この仮説が正しいとすれば、核タンパクの構造のちがった原因を考えることがたいせつ、という結論になるでしょう。もっとも単純に、それを低タンパク食とみる余地があるような気がします。核タンパクのつくりかえのとき、思うように材料のアミノ酸が手に入らなければ、まにあわせの核タンパクをつくることがあるだろう、と私は考えるのです。逆にいえば、高タンパク食で自己免疫病がなおるならば、私の仮説にとって有利な材料ができたことになるでしょう。

高タンパク食のために、私は配合タンパク40グラムを一日量にしたいと思います。食事のほうも、タンパク質を十分にとるように気をつけるべきです。

自己免疫病は、コラーゲンの病気だといわれているのですから、コラーゲン正常化のためのビタミンCも適当にとりたいものです。

それからもう一つ、ビタミンEがあります。これはフィードバックのためです。さしあたり、これを自然治癒のための条件としておきましょう。

自己免疫病の引き金になるものとしては、抗生物質のほか、降圧剤・抗てんかん剤・安定剤・抗不整脈剤などの中にある種のものがあげられています。

 

その後の経過:

一ヶ月ほどたつうちに、熱がひき、節ぶしの痛みもなくなり、病気がうそのように消えてゆきました。自覚症状がなくなったばかりでなく、首から上の異常な皮下脂肪もとれてきました。

それまでは硬直して、人形のように動かなかった五本の指が、魔法がとけたかのように、急に動きだしたのです。これには、本人もびっくりしました。

医師は、コーチゾン(ステロイドホルモン)の副作用を心配して、じょじょにそれを減量していましたが、高タンパク食・高ビタミン食をはじめた時点は、ちょうどコーチゾンをやめたときでしたので、タイミングがよかったということでしょう。