orthomolecular’s blog

分子栄養学の勉強メモ

自然治癒の健康相談(47)ネフローゼの子供ですが

相談者(9歳女子):顔がむくんで、急に元気がなくなったので、病院に連れて行きました。重症のネフローゼとの診断で、即時入院するように言われました。注射や飲み薬で治療を受けていますが、一向に良くなりません。いつ退院できるかわからず、心配です。

 

三石巌先生のアドバイス:

ネフローゼとは、腎臓の糸球体と言う名の濾過装置の具合が悪くなり、血清タンパクのような大きな分子がそこを抜けて、尿に出て行く病気と言って良いでしょう。ネフローゼ症候群の診断の基準は、尿中タンパク質の量が1日に3.5グラム以上、血中タンパク量が100ミリリットルにつき6グラム以下とされています。こんな低タンパク血では浮腫が現れてきます。低タンパク血症だと、血液が水っぽいので、その水分が血管の外に出て、浮腫の形をとるのです。

いずれにしても、タンパク質が失われているので、その補給をしなければ、低タンパク血症は治りません。一方、腎臓と言う器官は、その構成材料であるタンパク質の交代が比較的早く、ということは、これに見合うだけのタンパク質の補給がなければ、まともな腎臓は作れないと言うことです。タンパクが不足した状態に陥れば、腎臓に限らず、すべての臓器にガタが来る事は必至です。腎臓が悪いからといって低タンパク食を続けたら、全面的にアウトだ、と私は考えます。そこで、この患者の場合、高タンパク食を指示したいと思います。それに、血行改善のためのビタミンE、腎臓機能正常化のためのビタミンCも欲しいと思います。一般に、発育ざかりのお子さんの場合、体重1キロについて良質タンパク1.5グラムを必要とします。このお子さんの体重が仮に30キロとすれば、1日45グラムの良質タンパクがいるわけです。病院の食事でこれだけのタンパク質をとる事は、まず不可能です。したがって、配合タンパクを30グラムほどとってみたら、と思います。

その後の経過:

9日後の検査で、尿タンパクはゼロになりました。それで、注射はやめになりましたが、内服薬はまだ飲まされています。ただしその量は減りました。半年後の現在、どこから見ても病人とは見えず、顔色も良く、元気になって病院内を飛び回っています。病院の中に学校があるので、勉強はそこでやっています。親としては、こんな様子なら退院させてもらいたいと思うのですが、ネフローゼは簡単な病気では無いから、退院はさせられないと言われます。私としては、ネフローゼの下地として、低タンパク食、低ビタミン食があった、と言う想定をしていました。それで、食生活の改善策をとれば回復は早かろうと考え、2週間後に報告してほしいと言っておいたところ、9日で既に効果が現れたのでした。なお、配合タンパクは多種多様で、そのタンパク食価は低いものでは50台です。したがって厳密に言えば、配合タンパクならどれでも良いとは言えません。

自然治癒の健康相談(46)腎臓病の食事は?

相談者①(20歳女性):11歳の時、急性腎不全と言われ、絶対安静と無タンパク食を続け、タンパク尿を残したまま復学しました。その後も全身がだるく、顔や手足がむくみます。そして、食欲不振や吐き気に襲われ、脱毛が激しく、検査しても原因不明です。3年前から、水が胃に詰まって激痛を起こします。水は胃の中に10時間も溜まっていて、お腹をおさえると水の音がします。

専門医の診断①:最初の病気は、たぶん急性腎炎でしょう。タンパク尿があれば、現在も腎機能低下がありますが、腎不全と言うほどの事はなさそうです。胃の出口が狭くなると、飲食物が長時間残りますが、精神的な原因でも、痙攣が起きて同様な現象を起こします。また、胃下垂や胃アトニーで胃液の分泌が多いときには、胃のあたりを抑えたり叩いたりすると、ピチャピチャ音を出します。これは胃液の音で、水の音ではありません。長い年月にわたって厳重な食事制限を続けると、栄養不足のために、体がだるく、腎臓の機能も弱ります。そのような食事制限は、かえってマイナスになります。

相談者②(21歳男性):腎臓が悪いと言われ、塩分・水分・タンパク質の制限を受けていますが、そんなに厳しいものでしょうか。腎臓病の食事療法の基本を教えてください。このままでは、たまりません。

専門医の診断:腎臓は、代謝産物を体外に出す器官です。腎臓が悪いと、排出物の調節が難しくなるので、食物で調節する必要が出てきます。腎臓病といってもいろいろです。それで、慢性腎炎にかかって通院中の場合を例に取ってみましょう。水の制限は、尿量が極度に減るのを特徴とする急性腎不全の場合にだけ必要です。この場合、腎臓はひどく弱っているので、水がたくさん流れ込むと、病状が悪化します。食事の制限では、ナトリウムが重要な意味を持っています。腎機能が低下すると、体に必要なナトリウムを適度に保持することができなくなります。それが多すぎると浮腫(むくみ)ができ少なすぎると尿量が減ります。平均的日本人の1日に取る食塩の量は10~15グラムですが、慢性腎炎・慢性腎盂炎などで軽い腎機能低下のあるとき、それを5~6グラムに減らします。タンパク尿があっても腎機能低下のないときには、8~10グラムとします。タンパク質の制限についてですが、タンパク質は最終的には窒素化合物になり、これが腎臓から尿に排出されます。ところが、腎機能低下があると、窒素化合物が排出されずに血中に残るので、尿毒症になります。しかしタンパク質は必要なものですから、食物でとらないと自分の体を壊してタンパク質をとらなくてはならなくなります。だから、タンパク質の制限をしすぎてはいけません。慢性腎炎やネフローゼで腎機能低下のない場合、尿に出るタンパク質の量だけ、余計にタンパク質を取るべきです。

 

三石巌先生のアドバイス:

腎臓病にかかってタンパク尿が出ると、タンパク質の取りすぎという感じにとらわれます。しかし、腎臓もタンパク質であって、絶えず壊され、絶えず作り直されます。半交代期、つまり半分が更新するための時間は、腎臓の場合、一番短いのは11日、一番遅いのは180日とされています。腎臓の組織のうちには、ずいぶんはやく回転しているものがあるわけです。いずれにしても、作り直すときに材料が足りなかったら、前よりも粗末な腎臓が出来上がります。粗末な腎臓は、初めから機能が低下していて当然のわけでしょう。そのように考えるとき、無タンパク食の害が想像されます。①の場合、倦怠感、浮腫、脱毛などが見られましたが、どれも低タンパク食から来ています。倦怠感は、おそらく貧血から来たものでしょう。低タンパク食を続けると、低タンパク血症が起きます。この時、血液が水っぽいために、その水が血管壁から外ににじみ出します。これが浮腫となるのです。腎炎が起きた時、ある段階からは高タンパク食をとったら、慢性への移行が防げるのではないか、と私は考えます。どちらの場合にも、私は高タンパク食とビタミンCとをお勧めします。ビタミンCは腎臓の機能を正常化して、利尿効果をあらわします。できるなら、ビタミンCは1日20グラムぐらいとってみたいと思います。腎臓病が進行して、腎機能が極度に低下した状態を「腎不全」と言います。この時には、尿に出てゆくはずの尿素をはじめとする窒素代謝産物が血中に蓄積して、尿毒症の傾向になります。これがさらに悪化すれば、人工腎臓による透析や、腎臓移植を考えなければならなくなります。慢性腎不全となれば、窒素代謝産物を少なくするためにタンパク質の摂取量を減らさなければならなくなります。このようにして低タンパク食となれば、消耗を免れません。したがって、必須アミノ酸群を点滴するか、あるいは口に入れるかしなければならなくなります。

結局、タンパク質をとらずにはいられないわけですが、このようなときには、プロテインスコアが高く、乾燥状態のタンパク質含有率の高いものが望ましいといえます。そこで私は、試みにこの2つの数値の積を、主要食品について計算してみました。この表をご覧いただく場合、数値の大きいものほどタンパク質を選択的にとるのに適した食品だと考えてよろしいのです。この数値を仮に、「タンパク食価」としておきましたが、これの最大値は100で点滴用のアミノ酸輸液がこれにあたります。

牛肉63、鶏肉67、マトン58、豚肉26、ソーセージ22、牛乳19、鶏卵52、カジキ75、かまぼこ44、アジ71、さんま64、イワシ63、米飯5、じゃがいも4、そば10、うどん5、オートミール11、食パン4、プロセスチーズ35、豆腐26、(点滴用アミノ酸100)

北九州市のある産婦人科の先生が、私の著書を読んで、それまでの方針を変更し、高タンパク食に切り替えることによって、多発していた妊婦の腎機能障害が防げるようになったと言って、わざわざお礼に来られたことがあります。

 

 

 

自然治癒の健康相談(44)膀胱炎が治りにくいのですが

相談者(32歳女性):二児の母です。3年前、膀胱炎で入院しましたが、根治しません。退院後も薬を飲み続けて、止めるとすぐ悪くなります。知人からウツボ草のことを聞き、それを煎じて飲むと、尿の出が良くなります。副作用は無いでしょうか。膀胱炎の徹底的な治療は、どうしたらよいでしょうか。

専門医の診断:強烈な症状を起こす急性膀胱炎だと、治療は楽ですが、軽い症状が長く続く慢性膀胱炎は、なかなか治りません。もう一度、専門医の診察を受けるようお勧めします。

ウツボ草には塩化カリウムが含まれていて、これに利尿作用があります。副作用を心配する必要はありません。しかし、利尿だけを狙うのなら、番茶をがぶがぶ飲んでも良いわけです。日常の注意としては、尿意をもよおしたらすぐに排出すること、下腹をカイロで温めておくことです。これで、不快感はかなり楽になります。

 

三石巌先生のアドバイス:

膀胱炎は感染症です。だから、これの薬としてよく使われるのは、抗菌作用のあるサルファ剤です。サルファ剤は、血液に運ばれ、腎臓を通、尿の中に溶けていきます。そして、膀胱壁にとりついている細菌に直に働きかけることになります。サルファ剤以外にも、抗菌作用を示す薬はいろいろありますが、尿に入る前に肝臓や腎臓で分解(薬物代謝)されるものが多い関係上、膀胱炎に対して効くことを期待するのが難しくなります。

そこで、ビタミンCの抗菌作用を利用しようと言う考え方が出てきます。ビタミンCを大量にとればそのままの形のものが尿に出てくるからです。あなたの場合、かなり大量のビタミンCをとってみたらどうでしょうか。ビタミンCの細菌に対する作用は、直接と間接と、2つあると考えられています。直接のほうは、その殺菌作用です。ビタミンCの殺菌作用は、ブドウ球菌大腸菌など、膀胱炎の原因となる細菌に対してあらわれます。そこで、ビタミンCがいくらあったら良いかと言う問題ですが、細菌の増殖を抑えるだけなら50ppmと推定されています。これは、体重60キログラムの人では3グラムに当たります。細菌を殺すためには、その2倍が必要だといわれます。

間接作用はこうです。細菌に対して、好中球と呼ばれる白血球が貪食能を表しますが、この働きは、白血球が十分なビタミンCを含んでいる時でないと、完全に果たせません。ビタミンCの補給は、二重の意味で、細菌に対して強くなる方法なのです。

なお、膀胱の内壁は粘膜になっています。ここを健全に保つためには、つまり抵抗力を与えるためには、ビタミンAもなくてはなりません。ビタミンAを、合成品なら1日30,000単位ぐらいとってみてはどうでしょうか。また、アスピリンか消炎酵素剤を飲んでみてはどうでしょうか。消炎酵素剤というのは、たいていはタンパク分解酵素です。この酵素剤で、炎症を起こしている組織を分解しようというのが狙いですが、消化管からの吸収率は、0.3%程しかありません。

自然治癒の健康相談(43)肩こりで頭痛がしますが

相談者(55歳女性):

肩こりに悩まされています。ひどいときには、頭痛がしてきます。トクホンのようなものを買ったり、揉んでもらったりしても、あまり効果はありません。

三石巌先生のアドバイス:

肩が凝っている感じの時、肩や首筋の筋肉の細胞がパンパンに張って、血管や神経を圧迫しています。そのために、筋肉への栄養の補給が悪くなり、圧迫された神経が鈍痛を起こします。

筋肉が凝って硬くなる現象は、私どもの経験の中ではありふれたものですが、その十分な説明は無いようです。エネルギー発生に伴って発生した乳酸が、細胞の中に溜まって圧力を押し上げたと言うのが常識的説明だと思います。そこに私は追加を試みたいのです。実は、エネルギー発生に伴う現象の1つに活性酸素の発生があります。この活性酸素が、筋肉のフィラメント(第7問参照)や、それをカバーしているレシチンを主とするリン脂質を酸化するのではあるまいか、というのが私の仮説なのです。

リン脂質の酸化とは、それの持つ不飽和脂肪酸の酸化を意味しますから、これによって過酸化脂質の出現となります。この油の酸化物はフィラメントを粘りつけるので、筋繊維は伸縮ができなくなるばかりでなく、全体が硬くなるはずです。結局私は、乳酸の蓄積とリン脂質の酸化とで、筋肉のコリを説明したいと考えているわけです。

筋肉のフィラメントは、筋肉の機能の単位ですから、これが酸化したら大変です。そこで、これをカバーするリン脂質には、フィラメントの身代わりになって、活性酸素の作用を阻止する役割があります。それがうまくゆけばフィラメントは酸化せずにいられるわけです。

ところで、高タンパク食に、レシチンを加えると、筋肉が柔らかくなって張りが出てくると言うのが、マッサージ関係の人たちの一致した意見です。この解釈はいろいろでしょうが、さしあたっては、酸化して駄目になったフィラメントやリン脂質の補給のためにタンパク質やレシチンが利用されたため、と考えることができるでしょう。

それはつまり特別な労働をしない場合でもフィラメントやリン脂質の変化が起きていると言うことでしょう。別の表現にすれば、筋肉は絶えずタンパク質やレシチンを要求していると言う事でもあります。結局、タンパク質やレシチンの不足のない筋肉は、凝りにくく、また凝りが取れやすいことになります。普通の凝りに対しては、ビタミンEの服用や塗布がかなり効果があります。ビタミンEには酸化を抑制する作用があるからです。ビタミンEを塗ってマッサージをするのが効果的です。ビタミンB1にも、凝りを防ぎ凝りを取れやすくする作用があります。これには、乳酸の発生を抑える働きがあるためです。筋肉の凝りに対しては、揉んだりこすったりする治療法がよく行われます。こうすると、筋肉細胞にたまった乳酸が追い出される一方、粘りついて固まったフィラメントがほぐれることになるからだろうと私は考えています。それにしても、あんまやマッサージで凝りを和らげてみても、物質的な条件と欠陥があれば、逆戻りしても不思議はありません。従来の医師や治療師が、栄養の問題を無視してきたという事実のある事は確かですが、これは本当に残念なことです。あなたの場合も、私から見れば、根本は栄養の問題です。卵や肉などをたっぷり食べること、レシチンのためにおからをとること、ビタミンEに手を出すことなどをお勧めします。

自然治癒の健康相談(42)胃潰瘍は手術せずに治せますか

相談者(45歳男性):胃潰瘍の診断を受け、手術すべきかどうかの判定のために、毎月一回病院で検診を受けています。手術を宣告されたら…と思って、心配です。

 

三石巌先生のアドバイス:

胃潰瘍では、胃壁の粘膜の一部の細胞が、膜の破れた状態になっています。この破れたのが自力でつくろえるなら、手術をしないでも治る、という理屈になるわけでしょう。

なぜ細胞膜がパンクしたかというと、膜の材料となっている不飽和脂肪酸が酸化したためです。酸化の元凶は活性酸素ですので、本来ならば活性酸素除去酵素SODの出番になるわけですが、膜のパンクした細胞は機能を失くしているので、SODを作ることができません。よそからの補給が欲しいところです。アロエ胃潰瘍に良いなどと言われるのは、SODのためだろうと思います。むろんそれが目当てならば、葉は新鮮でなければなりません。

もちろん、死んだ細胞は処分の対象になるわけですが、このとき清掃係として出動するのは白血球です。白血球のこの時の武器がまた活性酸素なのですから、やっかいなことになります。

ここで活性酸素の除去ができないと一大事になるわけです。それなのにSODが不足しているのが実情です。そこで直接にでも間接にでも、SODの代用になるものが欲しいことになります。そんなうまいものがあるかといえば、イエスです。それは、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、セレン、ユビキノンなどいろいろです。ベータカロチンはニンジンやカボチャの色素、ユビキノンはコエンザイムQとも呼ばれるビタミンです。

いちばん現実的な方法は、空腹時にビタミンCを服用することだと思います。

胃潰瘍といえば、胃ガンとの関連があるために、一種の恐怖をよぶ傾向があります。しかし、WHOの調査によると、胃ガン多発地域は、乳製品を摂らない食習慣の地域に一致します。それで、乳製品に含まれているビタミンAが着目されることになりました。

ビタミンAは、粘膜組織をつくる粘質多糖コンドロイチン硫酸(第35問)をつくるのに必要だから、この不足は粘膜の機能低下をもたらし、ひいてはそこにガンが発生する、ということなのです。

それを考えると、ビタミンAを摂ることも、この際考慮すべきだろうと思います。

自然治癒の健康相談(41)慢性腸炎でくるしんでいます

相談者(25歳男性):4〜5年前から腹の調子がおかしく、慢性腸炎と診断されました。一日中お腹が張り、痛みがあります。苦しい時、手でお腹をさするとガスが出て、スッキリします。原因は何か、食事についての注意はあるか、など教えてください。

専門医の診断:慢性腸炎の原因はいろいろですが、過敏性大腸炎が大部分です。あなたの場合も、たぶんこれでしょう。慢性腸炎という名前がついたときに、腸の組織を検査しても、炎症は見つかりません。あるのはただ、大腸の機能異常だけです。過敏性大腸炎の症状は、腹部に重苦しい感じや腫れた感じがあって、便秘や下痢を繰り返します。また、大腸内に腐敗が起きてガスがたまります。原因は精神的ストレスだと言われていますが、社会の複雑化につれて、患者が増えるのではないかと思います。女性に多く、主に20~30歳の年齢の人がかかり、男性では30~40歳の年齢の人がかかります。治療法としては、腸の機能を調整する薬や、精神安定剤が使われますが、まず大切なのは、精神的ストレスを取り除くことです。これだけで治る人もかなりいます。食生活に差ほど神経質になる必要はありません。腸を刺激するようなものは避け、栄養価が高く消化の良いものを食べましょう。不規則な生活や心身の過労を避けることです。

 

三石巌先生のアドバイス:

基本的な点は、第40問と全く同じですが、ここに一つの対策を追加しておきます。

床に座って、両膝を立てます。それから、両手を握ってこぶしを合わせ、左右の4本の指の関節を揃えます。これをみぞおちにあてがい、そこを強く押します。そして、押す点を、次々と下方に移してゆきます。終点は恥骨のところです。要するに、腹部の正中線を、上から下へと押すわけです。これを50回ほど繰り返したら、こぶしを合わせた形を崩さずに、そのままで腹部の各部を強く押します。痛いところにきたら、痛みが消えるまで押し続けます。こうして、腹部全体を押してしまったら、右手で握りこぶしを作り、それを左手で強く腹部に押し付け、そのままの形で腹部をさすります。ただし、さする方向は時計回りにします。この回転運動を50回ほど繰り返して、おしまいにします。これは、指圧師 鳥居永忠氏の創業にかかる療法です。

自然治癒の健康相談(40)下痢のくせは治りませんか

相談者①(22歳女性):下痢が慢性のようになっています。専門医は、腸が少し荒れているだけ、といいます。一年前から、食後に左腹が重苦しく痛むようになりましたが、現在は腹痛が一日中続きます。下痢のない日は、軟便が1~2回あります。刺激物、肉類、洋食などを食べれば、必ず下痢になります。

専門医の診断①:食後に下痢を起こす病気を、「過敏性大腸症」といいます。食物が腸管を通過する速度が大きいだけのことですが、これは神経質な人によく見られます。過敏性の大腸では、吸収のために十分な時間が取れないので、下痢便・軟便になるわけです。この場合、栄養物質の吸収に支障は起きませんから、便通の前後に左下腹部に痛みがあっても、心配は全く要りません。下痢は、胃液の酸度が低い場合にも、よく起きます。この種の下痢は、梅雨期から夏にかけて悪化しますが、酸っぱいもの、塩辛いものを多めに食べると、かなり好転するものです。大腸炎があると、よく左下腹部が痛み、刺激物を食べると悪化します。あなたの場合、軽い慢性大腸炎か、あるいは過敏性大腸症に軽微な大腸炎を合併するものなのか、どちらかだろうと思います。これは、専門医ならば、腹部に触るだけで区別がつきます。日常の注意点は、まず心配しないこと、下痢しやすい物を食べた時には、消化剤と腸の過敏性を抑える薬を飲むこと、足や下腹を冷やさないこと、などです。

 

相談者②(38歳男性):サイダーやコーヒーを一杯でも飲むと、すぐに胃が重くなり、翌朝は下痢になります。特異体質でしょうか。

専門医の診断②:胃液に酸が含まれていないと、腸で腐敗が起きやすく、無酸性の下痢が起きることがあります。しかし、サイダーやコーヒーはアルカリ性でもなく、その一杯で胃酸が中和されるとは考えられません。むしろ、サイダーやコーヒーが神経を刺激して腸の蠕動を促進し、さらに水分の分泌を促進することからくる神経性下痢が、あなたの場合だろうと思います。これは全く心配の要らない下痢です。ニコチンの刺激、試験前の緊張、寒冷刺激などで起こる下痢と同じ性質のものです。下痢を起こさない程度に、サイダーやコーヒーの量を少しずつ増やしてゆくと、以前に下痢を起こした量でも平気になる見込みもあります。消化剤や精神安定剤の使用も考えられますが、特に医療が必要とは思えません。

 

三石巌先生のアドバイス:

消化管の内壁の細胞は、2~3日で更新されます。したがって、タンパク質の補給が不十分だと、大腸壁の機能に響くはずです。それを考えると、先決条件は、高タンパク食を摂ることです。下痢の背景には低タンパク食があるだろう、と私は思っています。一方、消化管の内壁の粘膜には、構成要素としてコンドロイチン硫酸がなければなりません。だから、ビタミンAが不足だと、大腸の機能は低下するはずです。ここにも、ポイントが一つあると思います。

神経性下痢が想定されるとき、ストレスに強くなるために、高タンパク食とビタミンCとが問題になってきます。

結局、どちらの場合にも、高タンパク食、ビタミンA、ビタミンCを、まずは試みたらどうか、と私は考えます。