orthomolecular’s blog

分子栄養学の勉強メモ

自然治癒の健康相談(46)腎臓病の食事は?

相談者①(20歳女性):11歳の時、急性腎不全と言われ、絶対安静と無タンパク食を続け、タンパク尿を残したまま復学しました。その後も全身がだるく、顔や手足がむくみます。そして、食欲不振や吐き気に襲われ、脱毛が激しく、検査しても原因不明です。3年前から、水が胃に詰まって激痛を起こします。水は胃の中に10時間も溜まっていて、お腹をおさえると水の音がします。

専門医の診断①:最初の病気は、たぶん急性腎炎でしょう。タンパク尿があれば、現在も腎機能低下がありますが、腎不全と言うほどの事はなさそうです。胃の出口が狭くなると、飲食物が長時間残りますが、精神的な原因でも、痙攣が起きて同様な現象を起こします。また、胃下垂や胃アトニーで胃液の分泌が多いときには、胃のあたりを抑えたり叩いたりすると、ピチャピチャ音を出します。これは胃液の音で、水の音ではありません。長い年月にわたって厳重な食事制限を続けると、栄養不足のために、体がだるく、腎臓の機能も弱ります。そのような食事制限は、かえってマイナスになります。

相談者②(21歳男性):腎臓が悪いと言われ、塩分・水分・タンパク質の制限を受けていますが、そんなに厳しいものでしょうか。腎臓病の食事療法の基本を教えてください。このままでは、たまりません。

専門医の診断:腎臓は、代謝産物を体外に出す器官です。腎臓が悪いと、排出物の調節が難しくなるので、食物で調節する必要が出てきます。腎臓病といってもいろいろです。それで、慢性腎炎にかかって通院中の場合を例に取ってみましょう。水の制限は、尿量が極度に減るのを特徴とする急性腎不全の場合にだけ必要です。この場合、腎臓はひどく弱っているので、水がたくさん流れ込むと、病状が悪化します。食事の制限では、ナトリウムが重要な意味を持っています。腎機能が低下すると、体に必要なナトリウムを適度に保持することができなくなります。それが多すぎると浮腫(むくみ)ができ少なすぎると尿量が減ります。平均的日本人の1日に取る食塩の量は10~15グラムですが、慢性腎炎・慢性腎盂炎などで軽い腎機能低下のあるとき、それを5~6グラムに減らします。タンパク尿があっても腎機能低下のないときには、8~10グラムとします。タンパク質の制限についてですが、タンパク質は最終的には窒素化合物になり、これが腎臓から尿に排出されます。ところが、腎機能低下があると、窒素化合物が排出されずに血中に残るので、尿毒症になります。しかしタンパク質は必要なものですから、食物でとらないと自分の体を壊してタンパク質をとらなくてはならなくなります。だから、タンパク質の制限をしすぎてはいけません。慢性腎炎やネフローゼで腎機能低下のない場合、尿に出るタンパク質の量だけ、余計にタンパク質を取るべきです。

 

三石巌先生のアドバイス:

腎臓病にかかってタンパク尿が出ると、タンパク質の取りすぎという感じにとらわれます。しかし、腎臓もタンパク質であって、絶えず壊され、絶えず作り直されます。半交代期、つまり半分が更新するための時間は、腎臓の場合、一番短いのは11日、一番遅いのは180日とされています。腎臓の組織のうちには、ずいぶんはやく回転しているものがあるわけです。いずれにしても、作り直すときに材料が足りなかったら、前よりも粗末な腎臓が出来上がります。粗末な腎臓は、初めから機能が低下していて当然のわけでしょう。そのように考えるとき、無タンパク食の害が想像されます。①の場合、倦怠感、浮腫、脱毛などが見られましたが、どれも低タンパク食から来ています。倦怠感は、おそらく貧血から来たものでしょう。低タンパク食を続けると、低タンパク血症が起きます。この時、血液が水っぽいために、その水が血管壁から外ににじみ出します。これが浮腫となるのです。腎炎が起きた時、ある段階からは高タンパク食をとったら、慢性への移行が防げるのではないか、と私は考えます。どちらの場合にも、私は高タンパク食とビタミンCとをお勧めします。ビタミンCは腎臓の機能を正常化して、利尿効果をあらわします。できるなら、ビタミンCは1日20グラムぐらいとってみたいと思います。腎臓病が進行して、腎機能が極度に低下した状態を「腎不全」と言います。この時には、尿に出てゆくはずの尿素をはじめとする窒素代謝産物が血中に蓄積して、尿毒症の傾向になります。これがさらに悪化すれば、人工腎臓による透析や、腎臓移植を考えなければならなくなります。慢性腎不全となれば、窒素代謝産物を少なくするためにタンパク質の摂取量を減らさなければならなくなります。このようにして低タンパク食となれば、消耗を免れません。したがって、必須アミノ酸群を点滴するか、あるいは口に入れるかしなければならなくなります。

結局、タンパク質をとらずにはいられないわけですが、このようなときには、プロテインスコアが高く、乾燥状態のタンパク質含有率の高いものが望ましいといえます。そこで私は、試みにこの2つの数値の積を、主要食品について計算してみました。この表をご覧いただく場合、数値の大きいものほどタンパク質を選択的にとるのに適した食品だと考えてよろしいのです。この数値を仮に、「タンパク食価」としておきましたが、これの最大値は100で点滴用のアミノ酸輸液がこれにあたります。

牛肉63、鶏肉67、マトン58、豚肉26、ソーセージ22、牛乳19、鶏卵52、カジキ75、かまぼこ44、アジ71、さんま64、イワシ63、米飯5、じゃがいも4、そば10、うどん5、オートミール11、食パン4、プロセスチーズ35、豆腐26、(点滴用アミノ酸100)

北九州市のある産婦人科の先生が、私の著書を読んで、それまでの方針を変更し、高タンパク食に切り替えることによって、多発していた妊婦の腎機能障害が防げるようになったと言って、わざわざお礼に来られたことがあります。