orthomolecular’s blog

分子栄養学の勉強メモ

自然治癒の健康相談(39)便秘の治療法はありませんか

相談者①(65歳男性):一年前から便秘で、売薬や医者の薬を用いてきました。便意は毎朝あるのですが、トイレに行くとそれがなくなり、結局、浣腸をしてしまいます。レントゲン検査で、腸に異常は無いと言われました。治療法を教えてください。

専門医の診断①:便意があるのに、排便しようとすると便が出ない場合、①便がかたすぎるか、②大腸の途中がくびれているか、③大腸がけいれんするか、などのいずれかが原因です。けいれん性便秘は、ストレス、胆嚢炎、膵臓炎、十二指腸潰瘍、下剤の使用過多、などが原因で起きます。この時、自律神経が不安定になり、大腸に機能低下が起こるのです。この便秘の特徴は、腹痛、吐き気、腹部膨満などを伴いやすく、便は小さくてかたく、ウサギの糞のようにポロポロです。あなたの場合、大腸の狭窄はないようですが、老年になって突発する頑固な便秘は、大腸ガンの唯一の症状であることがあります。それに、肛門のそばの大腸の部分はレントゲン検査の盲点で、しばしば異常が見逃されますので、もう一度、精密検査を受けたら良いと思います。大腸の狭窄がないと決まれば、けいれん性便秘と思って良いでしょう。この時は、下剤は刺激の少ないものとし、精神安定剤を併用したら良いと思います。

 

相談者②(35歳男性):15年前から、夕食ごろになると必ず下腹痛がおき、用便を済ませて横になって休むと回復する、というのが習慣になりました。その後、梅肉エキスを勧められ、3日間やったところ、それから10年間、便秘が続いています。現在、腹痛はありませんが、腹部が張っています。

専門医の診断②:あなたの場合は、けいれん性便秘だと思います。このタイプの便秘は、はじめには下痢であったもの、はじめから便秘のもの、便秘と下痢が交互にやってくるもの、などがあります。けいれん性便秘の原因は、食物による刺激、不安、緊張、心労などが主です。治療方針としては、繊維の多い野菜、暴飲、暴食など、腸を刺激する要因を避けること、腹を冷やさないこと、生活を規則正しくすること、などに重きを置く必要があります。また、ストレスが絡んでいることを承知し、精神的な不安や緊張を除くように努力することも必要です。薬としては、精神安定剤や抗けいれん剤が使われますが、医師の指示によらなくてはなりません。

 

相談者③(19歳女性):一年前まで、腹が鳴ってよく下痢をしました。最近は腹が張って重苦しい感じがあります。そして、便秘が続いては下痢をし、また便秘という調子です。夏でも冬でも、腹が冷えると、急に尿意をもよおして下痢をおこします。病名や療法を教えてください。

専門医の診断③:腹がゴロゴロ鳴るのは、飲み込んだ空気や飲食物が、腸内の水と一緒に移動するためです。また、便秘と下痢とが交互にくるのは「交代性便通異常」です。どちらも、重大な病気によることはまれで、多くは心因性のものです。また、腹が張って重苦しいのは、空気の腸内移動が鈍く、便秘のためにガスの排出が困難なせいです。冷えた時の下痢と頻尿とは、誰にもあることですが、ひどければ自律神経緊張異常が考えられます。あなたの症状に病名をつけるとしたら「過敏性大腸炎」という診断になるでしょう。この患者の3分の2以上には、原因と思われるストレッサーが発見されるものです。療法ですが、下剤も下痢止めも消化剤も、無効どころか有害な場合さえあります。医師の指示で、精神安定剤を試みるべきでしょう。いずれにせよ、ストレッサーに負けないタフな精神をつくる努力が、治療の基礎にあることを忘れないでください。

 

三石巌先生のアドバイス:

便通は、大腸の蠕動によって起きるものです。蠕動があれば、便意が起きます。大腸の蠕動が一番よく起きるのは、朝食時と朝食後です。だから、朝食後に必ずトイレに入る習慣をつけることが、便通の正常化にとって、第一の条件となります。また、大便のおよそ半分は、大腸菌、乳酸菌などの細菌です。だから、細菌にエサをやって便の量を増やすことは、便秘を防ぐ条件の一つになるように思います。細菌の好むエサは、野菜、アルファルファなどのセルロース(繊維素)や、梅肉エキス、プルーン、りんごなどのペクチンです。どれも多糖体ですが、こういうものを十分に食べると、便通がつきやすくなります。便秘に関係する消化管は大腸ですが、ここにいるいわゆる有用菌は、少なくとも20種あると言われます。その20種の生活する場所はそれぞれ決まっていて、その棲み分けが乱れると、細菌の活動がスムーズにゆかず、下痢や便秘を起こします。下腹を冷やした時の下痢や、多糖体の不足からくる便秘は、まさにそれだと思います。ここに訴えられたような頑固な便秘が、サツマイモやプルーンであっさり解消するとは思えません。しかし、こういうものの役割は無視できますまい。けいれん性便秘(交代性便通異常もその一つですが)がストレスの形と見られたとき、精神安定剤(トランキライザー)の使用を勧める医師が多いようですが、私の立場からすれば、それよりも先に、高タンパク食とビタミンCとを勧めたいと思います。目的は、ストレスに強くなるためです。ビタミンCは緩下剤にもなります。なお、大腸の蠕動を起こす筋肉のためにビタミンB1が必要なことも、見逃してはなりますまい。また、大腸の粘膜の正常化にビタミンAが必要なことも、考慮の価値があるでしょう。