orthomolecular’s blog

分子栄養学の勉強メモ

自然治癒の健康相談(50)肝硬変は治りませんか

相談者(69歳女性):半年前、貧血がひどくて診察を受けたところ、肝硬変と言われ、入院しました。3ヶ月の入院中、元気は出たけれどひどく痩せました。現在は通院加療中ですが、漢方薬も飲んでいます。腹水があって、時にすごい下痢をします。このままで良いのか、入院すべきか、教えてください。

専門医の診断:肝硬変のほかに、腹水・貧血・ 黄疸があるとなると、肝臓がん、あるいは他の臓器のがんの転移などが考えられます。さっそく再入院して、検査と治療とを受けることをお勧めします。肝硬変そのものは難病とは言え、絶望する必要のないものです。食欲に応じて良質たんぱくを食べてください。下痢が続くと栄養が取れず、貧血が悪化しますから、血管からの栄養輸液をしなければなりません。腹膜炎や腸炎など合併症の有無の検査も必要です。

三石巌先生のアドバイス:

肝臓の組織の半交代期は早い部分では10日、遅い部分でも140日というスピードです。成人の場合、肝臓が組織の更新のために必要とするタンパク質の量は23グラムと言われるのも、半交代期が短く、しかも臓器が大きいためにほかなりません。あなたの長年の食習慣に、低タンパク食によって肝臓を窮地に陥れる傾向はなかったでしょうか。また、肝臓はそれが担当する代謝のために、各種のビタミン類、特にビタミンB2を大量に要求します。あなたの食習慣に、低ビタミンB2食によって肝臓を窮地に陥れる傾向はなかったでしょうか。正直なところ、私は、その2つの点に問題があったに違いないと思っています。

手遅れかもしれませんが、何を差し置いても、高タンパク食とビタミンB2を取り入れることが先決条件でしょう。早くこれに気づけば、肝硬変との縁はなかったはずです。重症肝硬変で入院した場合、アミノ酸ビタミンB2との点滴を受けるのが普通です。貧血が低タンパク食の表れである事は、第11問に書いておきました。下痢も、低タンパク食から来ることがあります。入院して検査や治療を受けることが、この場合には必要ですが、さいわい退院できたら、第21問に紹介した光線治療も試みるべきでしょう。そして、横になっている時間をなるべく長く取ることが必要です。すべての病気に対して、それを自然治癒に導く働きが体に備わっていますが、その仕事を受け持つのは血液です。したがって、血液量が重要な意味を持ってきます。横になっていると、内臓の血液量は3倍以上に増えるのです。そして、それが「絶対安静」の医学的意義なのです。

病院で出される肝臓食は、低脂肪食になっています。脂肪の消化吸収には胆汁がなくてはなりませんが、これを作るために肝臓が働かなければならない、と言う関係があるから低脂肪食が指示されるのです。脂肪は脂肪酸の化合物ですが、人体にとってぜひとも必要な脂肪酸として、ガンマリノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸と3つの不可欠脂肪酸があります。これらは「プロスタグランディン」(『成人病は予防できる』74ページ以下参照)という局所ホルモンの合成に欠かせない材料です。プロスタグランディンは40種も知られていますが、これらが3つの系統に分かれているために、不可欠脂肪酸も3つということになります。人間の体は、すべての細胞での微調整を必要とします。それがうまくゆかないと、健康レベルの維持に支障が起きます。そして、その微調整を受け持つのが多くのプロスタグランディンなのです。万一、脂肪を完全にシャットアウトしたら、不可欠脂肪酸のストックは底をつくことでしょう。これでは体調の崩れは避けられません。その意味で牛乳・卵・下級魚などをメニューに加える必要があると思います。不可欠脂肪酸については、第10問に書いておきました。よく知られたリノール酸は、ガンマリノレン酸とアラキドン酸の材料として位置づけられることになりました。