orthomolecular’s blog

分子栄養学の勉強メモ

自然治癒の健康相談(17)風邪をひきやすいのですが

相談者(40歳男性):風邪をよくひきますが、どうも、風邪と食生活とは関係があるような気がします。風邪をひかなくなるような食事があるものなら、教えてください。

専門医の診断:日本人は寒さに弱い民族で、風邪をひきやすく、なおりにくいといわれます。そしてそれが、食生活と関係があるのです。日本人の食生活は主食偏重です。油気のないおかずでご飯をたくさん食べてみたり、漬けもので一杯という酒ののみ方をしてみたり、という調子です。この、低脂肪食、低タンパク食がいけないのです。脂肪もたっぷり、タンパク質もたっぷりの食事をとっている場合、体温にたいする寒冷の悪影響がいちばん少ないという報告もあるくらいです。寒いときには、体温を保つために莫大なカロリーが要求されます。これにたいして、脂肪がいちばん有利なのです。そのうえ、脂肪には甲状腺機能を高進させる働きもあります。甲状腺機能が高進すれば、代謝がさかんになり、熱の発生が多くなるので、からだが温まるわけです。一方、寒さはストレスとなって、体内のタンパク質をどんどん分解します。これを補うためには、日常、十分なタンパク質をとることがたいせつです。タンパク質は、血や肉になるばかりでなく、風邪にたいする抗体もつくります。寒い日に、すき焼きや焼き肉、あるいは中華料理がたべたくなるのは、生理的欲求といってよいでしょう。

 

三石巌先生のアドバイス

風邪にたいする抗体の話ですが、風邪という名の病気は感染症です。そして、最初に攻撃をかけてくるのはウイルスです。それも、ライノウイルス、レオウイルス、コクサッキーウイルス、アデノウイルスとさまざまです。ウイルスがちがえば、それの取り憑く器官がちがいますから、のどとか、関節とか、鼻とか、症状をあらわす部位がちがうことになります。

いずれにせよ、風邪がウイルス感染症だとすると、「抗体」とよばれたものが、抗ウイルス作用をもたなければならないわけです。これは、厳密にいえば抗体ではなく、「インターフェロン」です。そして、インターフェロンもまたタンパク質です。だから、風邪に強くなるためには、高タンパク食が必要です。そこで、低タンパク食の傾向のある日本人が、風邪をひきやすいのは当然、ということができるでしょう。

では、高タンパク食をとっている欧米人は、絶対に風邪をひかないかというと、そんなことはありません。なぜかというと、インターフェロンはタンパク質だけれど、それを体内でつくるのにビタミンCがいる、という事情があるからです。だから、高タンパク食にビタミンCがあれば、鬼に金棒です。そこで、どれだけビタミンCをとったらよいかが問題になりますが、ポーリングは、一日量250ミリグラムから10グラムという個人差をみています。これはつまり、体質的なものです。一日250ミリグラムのビタミンCで風邪をひかない人もあり、10グラムのビタミンCをとらなければ風邪をひく人もあり、ということです。

あなたの場合、低タンパク食のおそれは多分にあります。かりに高タンパク食をとっていたとしても、インターフェロンをつくるのに、五グラムも10グラムもビタミンCのいる人だったら、その対策をとらないかぎり、風邪をやたらにひいても、ふしぎはないわけです。

なお、寒冷刺激のことを、専門家はいわれましたが、寒さに弱い人は、のどや鼻などの粘膜の血管が、低温に出会うとはげしく収縮してしまいます。すると、そこの血行がにぶってインターフェロンの合成が不十分になるために、ウイルスが活動をはじめるのです。

ウイルスは細胞の中で増殖し、その細胞をこわしてしまいます。そこに、さまざまな細菌がつけこんで、症状を重くするのです。そして、いわゆる抗体は、細菌にたいして抵抗することになります。そこで、抗体をつくる白血球が問題になりますが、これはリンパ球という名の小さな白血球で、B細胞という別名をもっています。ところが、B細胞をつくる骨髄のはたらきは、温度と密接な関係があって、温度が低いほど、生産がへるのです。これは、細胞分裂がにぶるためではないかといわれます。

とにかく、抗体をつくるB細胞の数が、冬の寒い季節には不十分になる結果、風邪がこじれやすいことになるといわれます。

細菌が組織にもぐりこむためには、まず、結合組織をとかしてトンネルを掘らなければなりません。このとき、結合組織にねばりをあたえているヒアルロン酸という多糖体を、細菌は分解するのです。細菌は、ヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニターゼ)を分泌するわけですが、ビタミンCには、この酵素のはたらきをおさえて、トンネル掘りを妨害する作用があります。ビタミンCは、ここでも、風邪のような感染症にたいして抵抗するわけです。一方、白血球のなかまには、細菌をじかに取って食う好中球というのがあります。これの食作用(貪食能)は、好中球内のビタミンC濃度が高くないと発揮されません。ここにもまた、ビタミンCの役割があるのです。

いずれにしても、風邪の引き金はウイルス感染ですから、ビタミンCの役割はひじょうに大きいのです。ところで、ビタミンCにはウイルスの遺伝子をこわすはたらきがあるといわれます。生物の生命は遺伝子によって営まれているのですから、これをこわされたら、ウイルスもお手あげということでしょう。

もし風邪をひいたら、最初の兆候があらわれた時点から30分おきに、ビタミンCを1グラムずつのめば、数回でこれが退散するといわれます。すこし手おくれの場合、炎症がおきていますから、消炎剤としてアスピリンを二錠、一回目のビタミンCといっしょにのんでみるのがよい、と私は考えます。